森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

池江璃花子の夏

 

 

8月19日の朝刊スポーツ欄には「伊調・登坂・土性、トリプル金」の見出しが躍っていた。3人とも「奇跡的」という形容が決して大げさではない大逆転の末の金メダル獲得だった。
ふと紙面の下の方に視線を移すと「全国高校総体」の成績欄があった。「女子50メートル自由形、1位池江璃花子」の文字に目が止まった。

確かにリオデジャネイロオリンピック女子競泳の競技は全て終わっていたはずではあるが、スケジュール的にはありえなくはないが、池江選手は今年の春に高校に入学したばかりのスーパー女子高生であるとの報道を聞いたことはあったが、それにしても、まさか。

新聞記事を見つめたまま紙面をめくる手がしばらく動かなかった。

オリンピックで池江選手は、8月7日からの一週間で自由形、バタフライ、リレーなど7種目で12戦に出場した。100mバタフライでは予選、準決勝、決勝の3レースで泳ぐたびに日本記録を更新したのはまだ記憶に新しい。

そして日本に帰国したのが17日。羽田空港に帰国した彼女はそのまま翌18日から全国高校総体が開かれる広島に移動したという。
池江選手は、18日の50m自由形に続いて20日の100m自由形にも優勝し、その間、4×400mリレーメドレーにも出場している。しかも、このリレーではアンカーとして自由形で泳ぎ、参考記録ながら自身の持つ日本記録を上回るスピードで泳ぎチームを2位に導いている。

さらにこの後池江選手は、東京で開かれたジュニアオリンピックにも24日からの3日間で5種目に出場した。

そして、9月9日から岩手で開かれる国体にも出場する予定だとのことだ。
オリンピックも高校総体も、どの大会でも泳ぐことは同じ。同じレースを泳ぐ選手が誰であってもベストを尽くすのみ。この過密なスケジュールを淡々とこなす池江選手の泳ぐ姿がそう語っているように思える。
今日で8月が終わる。でも、池江選手の夏はまだ終わらない。

そして、泳ぐたびに過去の自分を越えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

  
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